しみ取りの管理方法
フロー収入の確保富裕層は毎月決算型投信を求めるPBサービスを受けていない富裕層は、どんな金融商品を購入しているのだろうか。
超富裕層だけでなく富裕層の顧客も1部担当している銀行や証券会社のプライベートバンカーは、富裕層の商品の好みについて次のように話している。
グローバル・ソブリンを持っている方に「分配金がたこ足(実際の利益以上に分配金を出してしまうこと)です」という説明をしても、「いや、分配金が出ているからいいんだ」という人が多い(証券会社のPB)三億円前後の資産のある人は、相続対策とフローの収入の確保を兼ねて、不動産とローンの仕組みを提案してほしいという。
さらに、毎月小遣いが取れるような投信などを組み合わせた提案になることが多い(信託銀行のPB)超富裕層は、日本株の場合、インデックスをそのまま持ってまったく動かさないケースが多い。
いわゆる外貨で毎月分配投信にはあまり関心がない。
一億〜二億円の層は外貨建てで毎月分配を大事にするが、それ以上の資産がある方は、関心を持たない。
最近、配当がだいぶ上がってきて、配当だけでも預金金利を上回る配当利回りが確保できる(信託銀行のPB)毎月決算型投信とは、分配金を再投資せずに、毎月受け取るタイプの投資信託である。
分配金を再投資し、複利効果をねらうタイプの投信と比較して、運用効率が落ちるという点で、資産運用の専門家の間ではあまり評判がよくない。
しかし、毎月決算型投信の代表例であるグローバル・ソブリン・オープン(通称グロソブ)の純資産残高が5兆円を超え、また、準富裕層からアッパーマス層を対象とした年金支給のない月に分配金が出る隔月決算型投信がヒットするなど、運用効率という視点だけでは説明できない顧客のニーズがあることも事実である。
このような定期決算型投信の持つ「フロー収入を確保する機能」には、改めて注目する必要がある。
フロー収入の確保を支援する第3章で説明したように、超富裕層にもフロー収入を確保するニーズは強い。
その典型例は上場企業オーナー経営者である。
彼らの資産の大半は自社株であり、不動産購入やプライベートジェットなどの高額商品の購入資金に事欠いてしまうことがある。
金融機関が、自社株の処分や証券担保ローンに力を入れるのは、上場企業オーナー経営者のフロー収入の確保を支援する意昧がある。
富裕層の場合、ゼロ金利が長く続いてきたため、定期預金からだけでは潤沢なフロー収入は見込めない。
そうなると、金利の高い外国債券ファンド、しかも分配回数が多いものに注目が集まる。
その代表例が、毎月決算型投信なのである。
毎月決算型投信は「おまけのように分配金が出る」というセールストークで販売されるという。
しかし、その商品性を十分に理解して購入している富裕層は必ずしも多くない。
たとえば、グローバル・ソブリン・オープンの場合、顧客が毎月決算型の分配金受け取りコースを選択すると、2001年1月以降、毎月実績ベースで1万口当り40円の分配金を受け取っている(収益分配方針は毎月決定されるため、固定ではない)。
この分配金は、ファンドで運用している債券の配当などの収益、有価証券売買益(キャピタルゲインや為替差益)から出ている。
しかし、これらの収益がマイナスになるときなどには、分配準備積立金を取り崩して分配金を支払うことがある。
この分配準備金は、信託財産と別立てで管理されているわけではないので、基準価格を削って分配金を受け取るということもある。
つまり、元本を取り崩して分配金を支払う可能性があるのだ(他の毎月決算型投信のなかには、元本を取り崩さないものもある)。
さらに、毎月決算型の場合、元本を上回る部分から支払われる分配金は、普通分配金として課税対象になる(元本を下回る部分の分配金は、元本の1部払い戻しと見なされて、特別分配金として非課税扱いとなる)。
本来は、富裕層の人生設計と資産の有効活用という観点で、「どのように資産を取り崩していくべきか」「フロー収入をどのように生み出すか」をトータルにアドバイスすべきであるが、現実には高配当の毎月決算型投信の募集が横行してしまっている。
富裕層のなかでも年金生活者へのアプローチは再考すべきである。
これに対して、米国の金融機関は、「リタイアメント・プラン」を通じて、現役世代にはリタイアするまでに老後の生活資金の蓄積を、リタイア世代には計画的に資産を取り崩していくことをアドバイスしている。
日本の富裕層の実態は、忙しい現役時代には預貯金のまま放置し、リタイア後に初めて資産運用に直面する。
過去においては、国内がゼロ金利であったため、高齢の富裕層が必要以上にリスク性資産を保有することが見られた。
しかし、大量の団塊世代の退職が生じる以上、リタイア後の人生設計の支援から、フロー収入の確保という観点でのアドバイスが、今後、より強く求められるようになるだろう。
PBサービスを規格化して、富裕層に適用していく四つ目の分野として、店舗での特別待遇について考えてみたい。
富裕層ならではの特別待遇が自尊心をくすぐる富裕層ビジネスにおいて、店舗やセミナーの活用は、話題になるわりには実態がともなわない難しい課題である。
なぜなら、富裕層はマス層ほど金融機関の店舗には来ないからである。
富裕層は、普段は電話でやり取りを行い、面談する場合は、担当者が顧客の自宅や勤務先を訪問するほうが当然と考えている。
そこで、まず、超富裕層向けのPBサービスにおける豪華な店舗の利用状況を整理しておこう。
NRI調査では、各社(行)の金融機関のPB専用スペースの利用状況をインタビューした。
その結果、店舗のハード面、ソフト面の工夫という観点から、三つのパターンに分かれた。
第一番目は、ハード面・ソフト面ともに、あまり力を入れていない金融機関である。
典型的なイメージは、一般の店舗の片隅に、通常のブースよりは多少高価な調度品を備えた接客スペースを設置し、超富裕層の顧客が、仮に店舗を訪れたときにも、「カウンターに並ばされて失礼な扱いを受けた」という印象を持たない程度の設備である。
このタイプの金融機関のポリシーは明確である。
「超富裕層の顧客は、めったに店舗を訪れることはないから、最低限の設備で十分である」ということだ。
二番目は、ハード面で充実しているが、ソフト面はとくに工夫していない金融機関である。
たとえば、1等地の高層ビルの上層階に超富裕層向け屈舗を設置し、調度品や絵画についても一切手を抜かず、最高級品を配置している。
ただ、このスペースをどのように活用するかというソフト面についてはとくにアイディアを持っていない。
実態は、この接客スペースに超富裕層を案内して、通常の資産運用のアドバイスを行う、だけである。
このタイプの金融機関には、「超富裕層の顧客がめったに利用しないのに、こんなぜいたくなスペースを持っていてよいのだろうか」という悩みがある。
三番目は、ハード面、ソフト面ともに力を入れている金融機関である。
たとえば、超富裕層の顧客が来店したときには、資産運用の相談や手続きを行うだけでなく、1流レストランと提携して、プライベートバンカーが顧客と一緒に食事を楽しむ。
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